これからオペラを観始める人に本当におすすめしたい公演5選
こんにちは。
最近友人がブログを毎日更新しているので、そのモチベーションにつられて私も久々にブログを書いてみようと思った次第です。
さて、みなさんはオペラを観たことはありますか?
ほとんどの人が、オペラに対して「つまらなそう」「ねむそう」「敷居が高そう」などと感じていると思います。しかし、本当にそうでしょうか?
答えを言うと、「オペラ好きといえども一部はそう思うものもある」です。
私も高校1年生の頃からオペラを見始めましたが、音楽でも漫画でもあるように、「合わない作品」というものは存在します。(実際、私はドイツオペラが少し苦手です…)
しかし、オペラにはたくさんの種類があり、またオペラの演出自体にも台本に忠実なものから独自の解釈が入ったものまで様々なものがあります。同じ作品といえどもたくさんの側面から作品を堪能できる機会が増えてきました。
なので、オペラを「作品」単位ではなく「演出」や「公演」単位で見てほしいというのが私の希望なのです。
というわけで今回は、完全に個人的な見解ではありますが、さまざまな切り口から初めての方におすすめのオペラの公演を紹介していきたいと思います!
- 王道のオペラをゴージャスなセット&演技派歌手の泣きの演技を観たい人におすすめ!MET2018-19「椿姫」
- 1人の美女を奪い合うドラマチックな友情×恋愛劇!海の上を舞台にした東南アジアの雰囲気が香る隠れた名作 MET2015-16「真珠採り」
- 必ず彼女に恋をする!美人ソプラノ歌手の華麗な衣装チェンジとどこか懐かしいフランスのおしゃれな旋律が魅力的 2007 ベルリン公演「マノン」
- 古代エジプト×ジャグリングの刺激的な演出が観たい人におすすめ!MET2019−20「アクナーテン」
- オペラ演出の最先端テクノロジーを感じたい人に!ROH 2011「ドン・ジョバンニ」
- おわりに
王道のオペラをゴージャスなセット&演技派歌手の泣きの演技を観たい人におすすめ!MET2018-19「椿姫」
Trailer
The MET: Live in HD 2019 - La Traviata Trailer
みんな絶対聞いたことある「乾杯の歌」
La Traviata: “Libiamo, ne’ lieti calici”
王道中の王道、ヴェルディの「椿姫」です。
あらすじは、かんたんに言うと「愛を信じない高級娼婦が純粋無垢な青年に本気の恋に落ちる」話です。
その中でも、かなり正統派な演出がこのメトロポリタン・オペラ(MET)の公演。
私は割と変わった演出を好む方なのですが(ひねくれているので)、この演出版は大好きになってしまいました。
なんと言っても主役のヴィオレッタ役のディアナ・ダムラウさんの美貌・声・演技!どれをとっても素晴らしいです。巧みな歌声と表情で確実に観客を泣かせにきます。私は3リットルくらい泣いたせいで映画館が水没しました。
そしてセットと衣装の豪華さもすばらしい限りです。これこそオペラの醍醐味と言えるようなラグジュアリーなセットが普段と違う世界へ私達を連れて行ってくれます。
解釈も台本に則っており、理解しやすいので初心者にはおすすめです。
METの公演はオンデマンドで視聴できます。(たしか1ヶ月15ドルくらい)字幕は残念ながら日本語はありませんが、英語でも理解しやすいような内容なので心配はいりません。
1人の美女を奪い合うドラマチックな友情×恋愛劇!海の上を舞台にした東南アジアの雰囲気が香る隠れた名作 MET2015-16「真珠採り」
Trailer(METではありませんが同じ演出です)
Bizet's The Pearl Fishers ǀ English National Opera
ダムラウ(推し)が歌うアリア
Diana Damrau sings an excerpt from "O Dieu Brahma" - The Metropolitan Opera
え、またダムラウかよ〜〜??と思われるかもしれませんが、はい、そうです。なぜなら推しなので。ははは。
というわけで2作目もMETでダムラウな「真珠採り」です。
実はこの作品、かの有名な「カルメン」を作曲したビゼーのものです。世間的にはあちらのほうが有名ですが、私はこの作品が大好きなのでどうしても紹介したくなってしまった所存です。
あらすじは、かんたんに言うと「男の友情が1人の美女の再来によりぎくしゃくしてしまい、村全体が動く大事態に!一体全体どうなっちゃうの〜〜?」な話です。
この演出版は、まずキャストが激アツです。
主役はトキメキのびのびボイスを持つテノール歌手マシュー・ポレンザーニさん、その友人であり村の首長である男役はかわいすぎるアラフォーバリトンおじさん、マリウシュ・クヴィエチェンさん、最後に2人が取り合うことになる、我らが演技派ソプラノ美女、ディアナ・ダムラウ様です。
例えるならば、ドラえもんにアンパンマンとコナンが同時出演しちゃった感じです。それは絶対傑作やろ、という感じですね。
さらに、オペラでは珍しく東南アジアが舞台になっているところも良いですね。
オペラの「固定観念」のようなものをいい意味でやさしく壊してくれる素敵な作品です。
ストーリーも他のオペラのドロッ、とした感じよりはジャンプっぽい爽やかな恋愛、友情模様となっておりますので、幼い頃ジャンプを読んで育った方には満足していただける内容となっていると思います!!
必ず彼女に恋をする!美人ソプラノ歌手の華麗な衣装チェンジとどこか懐かしいフランスのおしゃれな旋律が魅力的 2007 ベルリン公演「マノン」
マノンが最大級に調子に乗っている時期のアリア(衣装がめっちゃかわいい)
Je marche sur tous les chemins - Anna Netrebko (Manon 2007) (subs: EN-DE-ES-Croatian)
3作目は、「マノン」です。こちらもあまり初心者向けに紹介されることは無いかもしれないのですが、私はめちゃくちゃ大好きな作品です。大好きすぎて初めて手に入れたオペラのDVDはこのマノンです。
あらすじをかんたんに言うと、「田舎から修道女になるために出てきたマノンが通りすがりの青年と恋に落ちるも、都会に染まってお金が大好きになりすぎちゃうあまり破滅しちゃう話」です。このあらすじだけでたいへん面白そうですよね。
そんな感じでマノンは最初は純粋無垢な田舎っぺだったのに、パリに染まりどんどん調子に乗ったパリピへと変貌してしまうのです。(パリだけに)
その変貌具合を、これもまためちゃくちゃな美貌と演技力で完璧に表現してしまうのがソプラノの大スター、アンナ・ネトレプコ様です。
この演出版、衣装が5回ぐらいガラッとかわり田舎っぺなマノンも、シックなマノンも、マリリン・モンロー風のマノンも、死にそうなマノンも楽しめるのですが、ネトレプコはすべて完璧な着こなしでそれぞれのマノンになりきってきます。「もうこのオペラはネトレプコのために書かれたものなのでは?」と錯覚するほどです。
彼女から湧き出る魅力がマノンに愛らしさを爆発的に与えてくれるので、かなり最低な女なはずなのに全く憎めません。
音楽もシャンソンのようなフランスらしさの香るおしゃれな旋律です。
「シェルブールの雨傘」とか好きな人は絶対好きになってしまうと思います。見よう。
古代エジプト×ジャグリングの刺激的な演出が観たい人におすすめ!MET2019−20「アクナーテン」
Trailer
ガラッと変わって4作目はエジプトを舞台にしたオペラ「アクナーテン」です。
もうこれは完全に世界史が好きな人に見てほしいやつです。
私は高校時代世界史が大好きで資料集を舐め回すように眺めていたような人間なのですが、そういう人間がこれを見ると豪華絢爛な衣装の精巧さや独特のアマルナ文化の演出への取り入れ方が素晴らしく感激のあまり震えます。(逆に世界史が好きでないと「ん…?」となる内容かもしれません…)
あらすじはかんたんに言うと、「アメンホテプ3世の後を継ぎ、アクナーテンが一神教での治世を進めるも、民の反乱が相次ぎ…?」な話です。
また話自体は普通に歴史に則ったものなのですが、演出と音楽のマリアージュが素晴らしいです!作曲者のグラスさんは、繰り返しの旋律を多く用いることで有名らしいのですが、この演出版はその特性を上手く利用してなんとジャグリングで音を視覚的に表現してくるのです。音の盛り上がりとともに高く上がるボールに「うおおおお〜〜!」と思わず声が出そうでした。ジャグリングにこんな可能性があったとは!と感激した経験でもあります。
これを「普通」のオペラだと思って観ないほうがいいとは思いますが、オペラの演出の可能性というものをグッと引き上げてくれる経験になると思います。
オペラ演出の最先端テクノロジーを感じたい人に!ROH 2011「ドン・ジョバンニ」
Trailer
Don Giovanni trailer (The Royal Opera)
最後は、こちらも王道の「ドン・ジョバンニ」です。
あらすじはかんたんに言うと、「ドン・ジョバンニが女たらしすぎるあまり痛い目に合う」話です。コメディータッチのお話なので笑える場面も多数あり、気軽に観られるのが初心者に優しいポイントです。
しかし、上の動画を見ていただけるとわかると思いますが、このロイヤル・オペラ・ハウス(ROH)の演出はみなさんの思い描くオペラとはかなりかけ離れたものではないでしょうか?
そうです、こちらのオペラの演出にはプロジェクション・マッピングがふんだんに使われているのです。こちらの演出を務めたEs Devlinさんはアデルのコンサートやドバイ万博のイギリス館を監修するなど今めちゃくちゃキテるアーティストです。素晴らしくないわけがないですね。こちらの公演を見るとテクノロジー×オペラの可能性がぐんと広がる機会になると思います。
また、こちらのタイトルロールを務めるのは先程「真珠採り」でも紹介したバリトン界の大スター、マリウシュ・クヴィエチェンさんです。またかよ?と思われるかもしれないですが、推しなので致し方ありませんでした。
シアトル・タイムズも「会場中の酸素を吸っているようだ…」と褒めまくる最高のバリトン(それを本人は最高のドヤ顔とともに公式サイトにデカデカと載せる)なので、みなさんもぜひ推してください。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
「普通プッチーニ1つくらい入れるやろ」とか「あれ、アイーダは…?」みたいな声が上がると思いますが、あくまで異なる視点からさまざまなオペラを楽しめるようにチョイスした5つなので、他にもいろいろおすすめするべき作品はあると思います。
しかし、「作品」単位ではなく「公演」「演出」単位でオペラ作品と向き合ってみることは、良質なオペラ体験をする上でとても大事なことだと思いますので、どんどん同じ作品でも演出や公演による違いを楽しんでほしいなと思います!(まだ私もにわかですが…w)
ではでは。